2025年9月5日、財務省から令和7年上半期における税関での知的財産侵害物品の差止状況が公表されました。
発表によれば、
と、大きな傾向は変わっていないようです。
しかし、詳細な数字を見ていくと興味深い点が浮かび上がります。
まずは公表資料中の「知的財産侵害物品の輸入差止実績の推移」のグラフを見てみましょう。なお、本記事中のグラフはいずれも財務省ホームページから引用しています。

今回は上半期に関する発表ですので、色の濃い部分だけに注目します。
ちなみに「輸入差止件数」とは、税関が差し止めた知的財産侵害物品を含む輸入申告や郵便物の数を指します。イメージとしては、ある人からある人に1個又は複数個の荷物を1まとめにして送るときに、この「1まとめ」が「1件」となります。

一方「輸入差止点数」は、差し止められた侵害物品の個数です。例えば1件の輸入申告(1まとめの荷物)に20点の侵害品が含まれていた場合、「1件20点」として計上されます。
さて、件数ベース(濃い青のグラフ)では、令和7年は前年より1,018件(5.6%)減少しました。減少はしていますが前年とほぼ同水準といってよいでしょう。冒頭に記載のとおり、財務省も「上半期の輸入差止件数が3年連続で15,000件超え」と評価していますしね。
一方、点数ベース(濃いオレンジ)の減少幅は大きく、前年比で321,008点(43.5%)の減少です。この違いに何があるのでしょうか。次のグラフにヒントがありそうです。

ここに示されているのは「知的財産別輸入差止実績構成比の推移」、つまり先ほどのグラフ(濃い青色と濃いオレンジ色)を権利別に色分けしたものです。上段が件数ベース、下段が点数ベースです。
眺めてすぐに気づくのは、下段の紫の領域――すなわち特許権侵害品の点数が極端に減っている点です。
上段のグラフからわかるとおり、件数ベースだと特許権侵害品のシェアは非常に小さく、商標権侵害品が9割超を占めるのに対し、特許権侵害品は1%未満です。具体的には、令和6年上半期には、全体18,153件中、特許権侵害品は130件(0.7%)でした。
ところが、点数ベース(下段のグラフ)だと、令和6年上半期には、特許権侵害品は全体729,549点中230,561点、つまり3割超ものシェアを占めていました。
これは、令和6年上半期には、特許権侵害品が見つかった場合、一度に平均1,773個(=230,561÷130)見つかったという計算です。
これが令和7年上半期になると、96件で合計17,934点。1度に見つかる数は平均187個となり、依然多いものの前年の10分の1程度にまで減少した計算となります。
ここでもう一つグラフを見てみます。

ここに示されているのは、発見された知財侵害品がどのような形態で日本に届いたかということです。「一般貨物」というのは郵便物以外と考えればよいと思います。
知財侵害品が発見された一般貨物の件数は、令和6年上半期が2,400件であるのに対し、令和7年上半期は2,358件(42件減)。一方、点数は、539,241点が284,561点(254,680点減)。
つまり、知財侵害品が含まれて差止め対象となった一般貨物の数はほぼ変わらないのに、一般貨物から発見された侵害品の点数が激減しています。
以上から推測されるのは、数万~数十万点規模の知財侵害品、具体的には特許権侵害品が含まれていた一般貨物が、令和6年上半期には1~数件程度存在したということです。令和7年上半期にはそうした「大口案件」がなかったため、特許権侵害品の点数、ひいては知財侵害品全体の点数が大幅に減少したのではないでしょうか。
次回は、この「大口案件」が具体的にどの特許権を侵害するものであったのか、考察してみたいと思います。