2025.02.11
COLUMN

輸入差止申立ての事例(意匠権)

輸入差止申立ての事例(意匠権)

知的財産侵害物品の輸入を水際で止めるためには、税関に対する輸入差止申立てが有効です。今回はどのような権利が輸入差止申立てに活用されているのか、具体例を見ていきたいと思います。

税関HPで公開されている最新情報

税関の公式サイトには、輸入差止申立てが受理されている知的財産権が公表されています。公式サイトの中の「知的財産侵害物品の取締り」のトップページには、新着情報として最近受理された輸入差止申立てが掲載されています。2025年1月の時点では、たとえば、2024年12月25日に株式会社MTGによる意匠権の新規申立てが受理されたことが以下のように公表されています。

意匠権の詳細をJ-PlatPatで確認

公表された情報を見ると、意匠権の内容として「意匠登録第1678563号」と記載されています。この意匠権についてさらに知るため、特許庁が提供する知的財産データベース「J-PlatPat」を使用して検索してみました。その結果、以下のような登録意匠のページが表示されました。

図面を見ると、特徴的な形状のヘアブラシであることがわかります。このデザインは、見覚えがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

株式会社MTGの公式HPで製品を確認

この意匠権の権利者である株式会社MTGの公式ウェブサイトを訪れると、J-PlatPatに掲載されている登録意匠のデザインとよく似た商品「リファイオンケアブラシプレミアム」が紹介されています。

リファイオンケアブラシプレミアムは、定価8,500円(税込)で販売されている商品です。これは公式サイトの写真に示されているようにシャンプー中に使用する高品質なブラシであり、美容意識の高いユーザーに愛用されているようです。

模倣品の流通

残念ながら、このような高品質な商品にも模倣品(意匠権侵害品)が流通しているようです。侵害品は見た目は正規品にそっくりでも、正規品の機能や効果が得られず、消費者に不利益をもたらすことが多いです。そのため、侵害品の悪いイメージが正規品にも及び、正規品のブランド価値を毀損します。そのため、意匠権者が税関に輸入差止申立てを行い、水際での取締りを目指しているのです。

Google検索結果に見る課題

興味深いのは、Googleで「リファイオンケアブラシプレミアム」を検索した際の表示です。筆者が検索したときには、以下のスクリーンショットのように、画面上部に「¥900未満」という言葉がリコメンドされていました。

このような低価格の表示は、模倣品が市場に出回っていることを示唆している可能性があります。正規品が8,500円であることを考えると、価格差は非常に大きいです。

まとめ

知的財産侵害品の輸入差止めは、消費者を守り、ブランドの信頼を保つために重要です。本記事で紹介した意匠権の事例は、税関や特許庁データベースの情報を活用することで、模倣品対策を具体的に知る手がかりとなります。正規品を守る取り組みにご関心がある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。