企業や特許事務所の担当者にとって、特許証や登録証の管理は煩雑な業務の一つです。2024年4月1日より、これらの証書が電子ファイル(PDFファイル)で交付されることになり、管理や手続きが大きく変化しました。本記事では、電子化のメリットや従来との違い、再発行手続きについて詳しく解説します。
紙で発行される特許証や登録証には、以下のような特徴がありました。
メリット
デメリット
紙の場合と表裏の関係ですが、電子化された特許証や登録証は以下のような特徴があります。
メリット
デメリット
このように各担当者の実務に多少なりとも影響を与えている特許証、登録証の電子化ですが、さらに、2025年1月1日から、それらの再交付のルールも変わりました。
以前は、再交付には特別な理由が必要でした。特許法施行規則67条には、「特許証をよごし、損じ、または失ったときは…再交付を請求することができる。」と定められていました。つまり、汚損、破損、紛失のいずれかでないと再交付を請求できませんでした。しかも、「よごし、または損じた場合は、その特許証を提出しなければならない。」と定められており、たとえば、破れた証書を手元に残しながら新しい証書を再交付してもらうことはできませんでした。
しかし、2025年1月1日に施行された改正条文は、単に「特許証の交付を受けた者は、特許証の再交付を請求することができる。」とだけ定められています。よって、現在では理由を問わず、再交付を申請できます。また、手元にある古い証書と交換する必要もありません。
再交付の申請手続きも進化しています。従来は紙の申請書を特許庁の窓口に直接提出または郵送する必要がありましたが、現在ではオンラインでの提出が可能です。これにより、手間と時間を大幅に削減できます。再交付には1件につき4,600円の手数料が必要です。オンライン申請の場合は、支払いもオンラインで完結できます。
特許庁によると申請を受け付けてから2~3週間で再交付されるそうです。また、特許庁内での業務フロー上、紙で申請するよりもオンラインで申請した方が、担当者が実作業に取りかかるのが早くなる可能性があるとのことです。よって、少しでも早く再交付してほしい場合は、オンラインで申請することをおすすめします。
ここで気になるのが、再交付される証書は紙なのか、電子ファイルなのか、という点です。2024年4月1日よりも前に交付された場合は紙で再交付され、2024年4月1日以降に交付された場合は電子ファイルで再交付されるのでしょうか? それとも、申請時に自由に選択できるのでしょうか?
正解は、「最初の交付がいつどのような形態で行われた場合であっても、再交付は紙で行われる」です。電子データが欲しい場合は、特許庁から届いた紙の証書を自分でスキャンするしかなさそうです。
逆に、紙の特許証や登録証を額縁に入れて飾りたいのに電子データしか手元にないという場合は、特許庁に4,600円を支払えば紙の証書が入手できます(代理人を介する場合はその手数料もかかります)。
特許証や登録証の電子化は、知財管理における効率化をもたらします。一方で、各担当者の手元では紙と電子データが混在する状況が続くことから、管理の仕組みを工夫する必要があります。再交付手続きも簡素化されているため、紛失や破損に備えてポイントを押さえておくと良いでしょう。